第7集

情報提供室

このページは糖尿病である私の体験から得た医療に対する教訓と、現代医学が持つ
問題点を摘出すると共に、新しい医療情報を適切に提供するこを主旨としております。

情報 第7集(No61~No70) 目次

No61: 訴追された医師名、処分漏れ防ぐ
No62: 人工間接の新手術法
No63: ながら運動を毎日続けウエスト細く 
No64: セカンドオピニオン定着なるか
No65: 最高の医療を受けておりますか
No66: 「信頼のものさし」は病院の成績公開
No67: 原因不明の線維筋痛症の治療法探る!?
No68: 薬の副作用いち早く「発掘]」!?
No69: 眠り、深ーく研究に日本初「睡眠学講座」!?
No70: C型肝炎が糖尿病を誘発実験で実証!?

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2004/03/12(金)No61: 訴追された医師名、処分漏れ防ぐ !?

刑事罰を受けた医師や歯科医師に対する免許取り消しなどの行政処分が、漏れなく厳格に行われるようになる。法務省は医師らが起訴されたり、判決を受けたりした事実を監督官庁である厚労省に知らせることを決め、24日までに全国の地方検察庁に通知した。法務省経由で厚労省に情報が集まるようになる。

厚労省は医療ミスや犯罪で罰金刑以上の罪が確定した医師らを、免許取り消しや業務停止などの行政処分の対象としている。対象者はこれまで、都道府県の衛生部局が新聞報道などをもとに探したり、警察から免許の有無の確認があった場合に有罪確定を確認したりしていた。

報道されず簡易裁判所で略式裁判になった場合などは把握できず、処分漏れもったとみられ、厚労省が法務省に対し、情報提供を求めていた。 法務省刑事局は「医師、歯科医師は健康や命にかかわる重要な仕事。医療ミスを問う世論が高まっている中で、ほかの職種ではできない判断をした」としている。

厚労省は看護師、薬剤師らが罰金刑を受けた場合も行政処分を検討するが、これらは情報提供の対象にならず、今後も都道府県などが情報収集する。
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2004/03/19(金)No62:人工股関節の新手術法 !?

高齢化社会が進むにつれて、骨盤と大腿(だいたい)骨をつなぐ関節・股関節の軟骨がすり減って痛みが出たり、歩行困難になったりする患者が増えている。

症状が悪化すると、人工股関節を入れなくてはならないが、1~2か月に及ぶとされる入院を考えると、二の足を踏む患者が多い。お尻の横に15~20センチの傷が残るので、特に女性は抵抗があった。

また、傷が大きいと感染症にかかりやすい。これらの問題を改善するため、1990年代後半に米国で開発されたのが極小侵襲手術だ。この方法をとり入れた同院整形外科の平川和男教授が執刀した。

手術は、まず従来の半分以下である6~8センチの切開傷を作る。そして、その奥の筋肉、じん帯へと切り進め、股関節を露出させてから、金属製の人工股関節を埋込む。

小さな傷を通して手術するので、人工関節を埋め込む穴を開けたり、骨を削ったりするための特別な医療器具約10種類を使用する。

その結果、患者の平均入院期間は13日と、従来の半分以下だった。手術後3日ほどはベッド上で安静にするのが一般的だが、新手術法は、当日か翌日から歩行器を使って起き上がれ、痛みも少なかった。 ただし手術時間は、1時間ほどだった従来に比べ、30分ほど長い。

また手術後、血液の塊ができて血管を詰まらせる肺塞栓(そくせん)、貧血などの合併症が心配されるが、早期に退院するために、薬を飲むなどして自ら予防しなくてはならない。

切開傷が小さく、手術中の視野が狭いために、股関節の変形が大きい患者の治療は難しい。だが、人工股関節が必要な患者の9割に対応できるという。 

http://www.yomiuri.co.jp/iryou/saisin/sa420301.htm

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2004/03/26(金)No63:ながら運動を毎日続けウエスト細く !?

35歳のいま、大学までラグビーで鍛えた体は見る影もありません。脇腹の脂肪は厚く、前年のズボンがはけません。時間がなくても、通勤や仕事をしながらの「ながら運動」があります。動脈硬化の要因になるLDLコレステロール値は150ミリグラムと高め。手先の血の巡りがかなり悪いと指摘された。朝食は食べない、夜遅くまで勤務し、自宅に帰ってから夕食と、不健康な食生活のつけが回ってきたようだ。

医師からは「無理に運動時間を作ろうとすると続かない。最寄り駅から一つ手前で降りて歩くだけでも運動量は増えます」と諭された。相談の結果、(1)歩く時間を通勤の行き帰りで各10分(各約1000歩)増やし1日8000歩にする(2)エスカレーターやエレベーターは使わない――を通勤しながらの目標にした。 記録のため、1週間分のデータをまとめてパソコンに取り込める歩数計を購入した。「ちょっと遠回りして夜桜を楽しむなど、お気に入りのコースを見つけるといい」と医師。

おなかを引き締め、筋肉も鍛えたい。そこで、「日常ながら運動推進協会」(東京都渋谷区)に、ながら運動を教えてもらった。 まず、いすに座ってできるもの。そろえた両ひざを押し合う=太ももの内側を引き締める▽両ひじを曲げ背もたれを強く押す=背中の筋肉を刺激▽足の甲を別の足のアキレス腱(けん)に当て両足を押し合う=太ももの強化。「思いたった時にするのが長続きのコツ。ちょこまかと体を動かしましょう」とのこと。

効果はいかほどか。埼玉県が、ながら運動を4カ月間続けた43人を調べたら、最も多い人で平均運動量は116キロカロリーから250キロカロリーへと2倍以上に増加。平均でも10%増えていた。 ながら運動のような「ややきついより少し弱い程度」の運動は体内の脂肪を消費し、コレステロール値を下げ、肥満を防ぐ効果が期待できるという。

電車の中で立つのも運動になる。十数人を対象に、ふくらはぎのヒラメ筋の活動量を筋電図で比べた。立っている時は座った時の約5倍だった。「毎日の積み重ねで大きな差になる。習慣にすれば、筋力が衰えるのを遅くできる」と。私は、効果をみるために食生活はあえて変えず、ながら運動を2週間続けてみた。

1日の平均歩数は目標を上回る1万1000歩を歩いた。電車や信号を待つ間は、かかとの上げ下げ運動や、かかとがお尻につくようひざを後ろに折る運動。電車内では座りながらできる運動を一通り。駅に着くたびに運動を替えて、飽きないよう工夫した。図の運動も毎日、全部。その場もも上げは、上体をねじる動きを加えて脇腹を刺激した。

再び医療センターで健康チェックを受けて驚いた。ウエストは3センチも細くなっていた。コンピューター断層撮影で内臓脂肪の面積は15%減。LDLコレステロール値は119ミリグラムに減っていた。手先の血流は大幅に改善。体重は700グラム減止まりだった。医師は「体重が減らなくても、運動には糖尿病や高血圧、心臓病の予防効果があります。この調子で続けて下さい」ほめられて、やる気が増した。
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2004/04/01(木)No64:セカンドオピニオン定着なるか !?

《患者への浸透、なお時間》

主治医から提案された治療について、ほかの医師に意見を求める「セカンドオピニオン」を専門に受け付ける外来が、県内の一部の病院で開設されている。しかし、設置数はまだわずかで、利用する患者も少ない。医療関係者は、セカンドオピニオンは、患者が治療方針を自己決定するために重要で、要求は高まっていという認識でほぼ一致しているが、定着には時間がかかりそうだ。

《専門外来まだわずか》

愛知県がんセンター病院(名古屋市千種区)は、木曜日の午前中に「セカンドオピニオン外来」を開いている。白血病の権威である大野竜三同センター総長が慢性骨髄性白血病について、前同病院乳腺外科部長の三浦重人医師が乳がんについて、それぞれセカンドオピニオンの相談に応じている。

セカンドオピニオン外来は、02年1月に大野総長の判断で設けた。その前年白血病の新薬として臨床試験中だった分子標的薬「グリベック」の治験を受けたいという患者が、大野総長のもとに全国から殺到した。

患者のデータに目を通す大野竜三・県がんセンター総長=名古屋市千種区で当時、白血病の治療薬として一般的だったインターフェロンは副作用が強い。つらい副作用があるのに投与を続ける主治医に疑問や不満を抱く患者や、必要なインターフェロン治療をやめてしまったという事例が少なくないのを見て、「セカンドオピニオンを得られる態勢の必要性を痛感した」という。

専門の外来を設けたのは、セカンドオピニオンにはどうしても時間を要するからだ。患者が質問を3~4項目は持ってくる。家族が同伴することも多い。「全員に分かってもらうために時間がかかる」。「30分厳守」としているが、時間内で終わらず、1時間以上かかったこともある。通常の外来で受け付けると、ほかの診療が止まってしまう。

患者の症例は、難しく、複雑なものが多い。大野総長も悩む場合が少なくない。悩みの多くは「骨髄移植を勧められたが、薬の治療で対処できないか」という内容だ。主治医と同意見がほぼ半数、残り半数は何らかの別の意見を付ける。転院を勧めるまで踏み込んだ事例は一例だけ。専門医がいない町立病院で治療を受け、明らかに最善の治療ではないと判断したからだ。患者の反応は、「これだけの時間をかけて丁寧に説明を受けたことがない」「深く納得できた」と良好だ。

昨年7月には、相談対象を乳がんにも拡大したが、この3月末で担当医の都合でやめる予定だ。「後任が見つかれば再開したいが、セカンドオピニオンを出すには、十分な経験のある専門医でなくてはならないので難しい」と大野総長は言う。今年1月に就任した加藤知行病院長が、専門の大腸がんについてセカンドオピニオンを始められないか検討している。「他の科にも拡大したいが、多忙な現場の医師にセカンドオピニオン外来までやってほしいとは言えない」。

セカンドオピニオン外来は予約制で、紹介状(診療情報提供書)がいる。検査結果を持参することが望ましい。同病院は、保険診療の対象としているため、初診料とセカンドオピニオンを主治医に書く診療情報提供料などがかかるだけで済む同病院としては採算はとれないという悩みもある。大野総長は「ボランティアのつもりでやっています」と話す。

利用する患者数はまだ少ない。今年度の患者数は白血病が月平均2人。乳がんも月平均5人。まだインターネットで存在を知ったり、口コミで聞いたりして来る患者が多い。

大野総長は「セカンドオピニオンというものを知らない患者だけでなく、主治医、『他の医者に意見を聞きたい』と言い出しにくい患者が多いのかもしれない」とみている。大野総長を訪ねる患者の9割以上が紹介状を持ってくる。「医師自身も迷っていて、ほかの意見を聞きたい場合もある。医師は患者が思っている以上にわきまえていて、嫌がらないものです」

《国・県 鋭い取り組み》

セカンドオピニオンの普及や啓発のための、国や県、医師会の取り組みはまだ鈍。厚生労働省は「セカンドオピニオンは患者の選択、医療への参加のために重要」(医政局総務課)として、02年4月に医療機関の広告規制緩和でセカンオピニオンに関する広告も可能にした。東京都では、都が音頭をとってセカンドオピニオン提供のあり方を検討し、都内で専門外来を開く病院が増えるなど広がりが出ている。

《設置要望 診療報酬が壁》

日本医師会が02年に一般国民や医師、患者を対象に行った調査では、国民の6%、患者の60%が「主治医以外の医師の意見を聞いてみたい」と答えた。しかし、セカンドオピニオンを得られるということを「知っている」と答えたのは、国民で12%、患者で10%に過ぎない。

一方、医師は、セカンドオピニオンについて「快く勧める」が55%、「患者が納得するので構わない」が33%と、9割近くが肯定的に受け止めている。有料でセカンドオピニオンを提供する医師を紹介している「セカンド・オピニオンを推進させる会」(神奈川県茅ケ崎市)の中村康生代表は「広告規制の緩和以後、医師、病院の認識は格段に深まり、新たな段階に入った」とみている。

《実状は掴めず》

県内では、県がんセンターのほか、名古屋共立病院(名古屋市中川区)が、03年4月に、小川一誠・元愛知県がんセンター総長による「がんセカンドオピニオン外来」を設けた。2病院以外の専門外来の存在は、厚生労働省や県、県病院協会も把握していない。

名古屋大学病院など県内四つの特定機能病院には設けられておらず、県も、東京都のような具体的取り組みには至っていない。県医務国保課によると、昨年7月に設けた「医療安全支援センター」の電話相談でセカンドオピニオンを求められるケースがあり、「要望が高まっているのは認識している」と言う。

県医師会の大輪次郎会長は「セカンドオピニオンを求めることは良いことだ。ただその多くは主治医とのコミュニケーション不足による不満があるためだろう」。

《保険外が大半》

定着に向けたもう一つの課題は、医療保険にセカンドオピニオン提供単独の診療報酬がない点だ。現在は、県がんセンターのように、赤字覚悟で現行の診療報酬だけでやっているケースより、「30分まで1万円」(東邦医大大森病院)のように保険外の自由診療としている病院が多い。

前進させる会の中村代表は「定着させるためには保険適用すべきだと考えるが、無条件に認めると医療費の増加につながる。質を維持するためにもセカンドオピニオンを提供できる専門医や病気を限定すべきだ」と指摘する。

今年は、2年ごとの診療報酬改定の年にあたる。厚生労働省保険局医療課によると「中央社会保険医療協議会では、セカンドオピニオン提供の報酬を差額ベッドのような特定療養費として認めるかどうかが議論されている」という。
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2004/04/08(木)No65:最高の医療を受けていますか !?

糖尿病の最高の医療って何でしょうか。それは「正しい治療を、正しいタイミングで受ける」ことです。こんな分りきったことがなかなか実行されてないことを、あなたはご存知ですか。ましてや医師でさえそのことを充分に認識していないのが実状なのですよ。

英国で糖尿病のある人は血圧の正常化も大切なことが立証されました。しかし血圧降下薬のベータ・ブロッカーは糖尿病を進行させるという発表もありました。サイアザイド利尿薬にいたっては大切な膵ベータ細胞に毒性があるということを一体どの位の医師が知っているでしょうか。

健康保険証一枚あれば、どこの病院でも診察を受けられる制度は、社会の平等性、公平性からみても素晴らしいものです。ところが、いざ最高の医療を受けようとすと、日本のシステムはうまく機能しません。新聞で読んだ名医の執刀を自分も受けうと、保険証を持ってその病院を訪ねる「うぶ」な人が多いのには驚かされます。

欧米では最高の医療サービスはお金を払えば受けられます。特別なコネは要りませんから、「優れたサービスに対する正当な対価」と考えればこれも平等、公平の一面だと言えます。医療(命)さえもお金で買える時代なのですが、これを誰が批判できのでしょうか。

ドイツではリッチマンは社会保険の枠から出て、高度な医療を受けられる民間保険に入れるし、イギリスでも基本的には国の医療制度の中に組み込まれていますが、民間保険に加入すれば普通の人のように数ヶ月も空きベッドを待つこともなく、また専門医を選ぶこともできるのです。

アメリカではいろいろな健康保険を選ぶことができて、世界一の正確な診断と的確な治療を受けられますし、保険選択の自由の無いカナダの人が、最高の医療を望めば国境を越えればいいだけです。スペインのお金持ちは「がん」と診断されるとパリへ飛んでセカンドオピニオンを求めます。

いざという時に金に糸目をつけずにと思っても、それに応じてくれるシステムが無い島国日本はやはり特異的なのです。この国では大学病院の差額ベッドや、コネと謝礼という狭い抜け道しかないのは、競争原理をもとに医療の質を高めようという世界の常識に反することです。

ましてや国家公務員倫理規程で、盆暮れのあいさつまで禁止されてしまうと、国公立大学や公的大病院の名医達はますます庶民の手に届かない遠い存在になってしまうかも知れません。エリートしかみてもらえなかった明治時代の大学病院に逆戻りです。

情報公開の進んだ国では糖尿病専門医や内分泌医はすぐわかりますが、日本では認定医制度すらよくわかりません。最近の報道ではある程度の公表が認められそうでが、規制緩和は大いに望むところです。
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2004/04/15(木)No66:[信頼のものさし]は病院の成績公開!?

「患者の命、運で決まる」 データ比較、医師も求める声

生死が病院で左右される――。厚生労働省研究班などの調査で、病院によって大差があることが判明した急性心筋こうそくの死亡率。「医療は平等だ、といっても国民はもうだまされない」。医師たちからも、治療成績公開の必要性を訴える声が上がる。

「病院によって患者の重症度が異なる」と成績比較の困難さを指摘する意見も少なくないが、厚労省研究班の調査では病院の方針次第で、治療内容が大きく異なる現状も浮かんだ。

3月27日、東京都内で開かれた日本循環器学会。心臓病の専門医ら200人以上が集まったシンポジウムで、急性心筋こうそく患者の死亡率と病院の質をめぐる議論があった。

「病院や地域で重症患者の割合が違うので、評価は難しい」「死亡率だけでの判断はよくない」。消極的な声が続いた後、虎の門病院(東京都港区)の山口徹院長が発言した。「各病院が成績を公開し、必要なら言い訳をすればいい」

東京医科歯科大の川渕孝一教授も「私もいい病院に行きたい。いろいろ調べたが症例数が多いからいい病院とも言えない。医療は平等だ、といっても国民はもうだまされない。(病院の格差による)運、不運で命が決まっている」と訴えた。

さらに「患者の重症度の違いがあっても治療成績を比較できるシステムを、国を挙げて作る必要がある。そのうえで厚労省は、頑張って成績を上げた病院や医師が報われる制度を作るべきだ」と語った。

厚労省研究班の調査によると、急性心筋こうそくの患者の平均入院期間は最短の病院で15日。だが最長の病院では32日に達した。長くなる理由は重症度と関係なく、患者の退院直前に心臓の血流を調べる「冠動脈造影検査」の実施だった。検査に適した時期まで、病院が患者の退院を延ばしていると推定された。検査は患者にとってのメリットも少なかった。

退院後に処方する薬もバラバラだった。原則として「ベータ遮断薬」という薬を出すべきだとされるが、実際に飲んでいた退院患者は22病院全体で25%。病院別では74%の患者に処方する病院も、5%にしか処方しない病院もあった。

調査は99~01年の入院患者が対象で、研究班は結果を各病院に知らせた。03年秋の再調査では全体の入院中死亡率が平均で約8%となり、1回目調査の12%から改善された。ベータ遮断薬が処方される割合も患者全体の50%にまで上がった。
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2004/04/22(木)No67:原因不明の線維筋痛症の治療法探る!?

リウマチのように全身の関節が激しく痛み、疲労感や頭痛などが続く原因不明の病気、「線維筋痛症」の患者が増えている。全国で100万人という大まかな推定もあるが、実態は不明。厚生労働省の研究班は全国のリウマチ専門医ら4000人以上からデータを集め、患者の症状や生活状態、予防・治療法を探ることになった。

線維筋痛症は、90年代以降に米国や欧州で急速に増加。関節や骨と付着している筋肉が痛むのが特徴で、肩などから痛み始めて全身に広がる。痛みで寝付けないなど日常生活に支障が出る。

40代以降の女性に多く、血液検査ではリウマチのような免疫異常は見つからない。全身18カ所の圧痛点を押し、11カ所以上で痛みを感じ、ほかの原因が考えられない場合、線維筋痛症と診断される。

日本ではリウマチ専門医を受診する患者の約5%が線維筋痛症との見方もある。米国の患者数は推定300万人以上。 医師にも病名がよく知られておらず、更年期障害や慢性疲労症候群などと誤診されることも少なくない。研究班メンバーの最近の調査で、小中学生にも発症者がいることがわかり、不登校などの原因になっていることもわかってきた。

『線維筋痛症』 全身の関節付近の痛みが3カ月以上続き、疲労感や頭痛、眠障害などの症状もでる原因不明の病気。70年代に米国で初めて症例が確認され、90年に米国の学会で診断基準ができた。日本でも80年代後半に患者が確認された。根本的な治療法はなく、鎮痛剤や抗うつ剤で症状を和らげる対症療法が中心になる。
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2004/04/30(金)
No68:薬の副作用いち早く「発掘]」!?

大量のデータから有用な情報を発掘するデータマイニング手法で、薬の副作用をいち早く見つける――。そんなシステム開発に、厚生労働省と医薬品医療機器総合機構が共同で乗り出した。担当者の目に頼っている現状を改善し、副作用被害の兆候を初期段階でつかむことを狙う。総合機構は、5年以内の実用化を目指している。

薬事法は、製薬会社や医療機関などに、副作用を国に報告するよう義務づけており、厚労省には年間約2万5000件の副作用情報が集まる。海外の副作用情報などを合わせると、年6万~7万件にのぼる。これまでは厚労省の担当者30人ほどが目を通し、緊急な対応が必要となる情報を選別していた。

コンピューターを使ったデータマイニングは、市場調査や顧客調査などビジネス分野で急速に発展している。米国のスーパーが購買動向の解析に利用、「紙おむつと缶ビールを同時に買う男性が多い」との結果に従って、おむつと缶ビールの売り場を近づけると実際に売り上げが伸びた成功例などが知られる。

厚労省はデータマイニングの導入で、効能が異なる二つの新薬の飲み合わせによる副作用の発見などに期待している。 総合機構の黒川達夫・安全管理監は「厚労省の担当官は経験を積んでおり、過去の様々な事例など頭の中の情報を総動員して日々の副作用情報に目を通しているが、『見落としはないか』と常に不安を感じている。危険な兆候を見つけだせる新解析法が実用化すれば、心強い」と期待している。
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2004/05/07(金)No69:眠り、深ーく研究に日本初「睡眠学講座」!?

不眠症や睡眠時無呼吸症候群など社会問題化している睡眠について、体系的に研究する「睡眠学講座」が今春、滋賀医科大(大津市)に誕生した。日本睡眠学会によると、睡眠学の講座は国内初という。

睡眠に関係する診察は、一般的に、いびきがひどいと耳鼻科、不眠症だと精神科、子どもの場合は小児科と入り口は広い。だが、各科だけで対応すると、根本的な治療につながらないこともある。夜中にせき込むので風邪と思ったら実は無呼吸症候群だったケースもあったという。

講座では、各科に分かれた診療現場の情報を結びつけるほか、医師の研修や社会人向け講義にも取り組み、いかに睡眠が大切かを広く訴えていく。講座は製薬会社などによる寄付講座。主任教員には、無呼吸症候群の治療が専門の宮崎総一郎教授が就いた。

今後、宮崎教授は週2回ほど外来診察に当たりながら、講演、研修などで全国を飛び回る。7月には大津市で市民公開講座を開く。宮崎教授は「ここを全国の睡眠学の拠点にしたい。民間の医師や検査技師への研修も科を横断する形で開きたい」と話す。

講座を発案した滋賀医科大精神医学講座の大川匡子教授は「最近は子どもの不眠も問題で、『イライラする』のが眠気と関係すると疫学的に分かってきた。睡眠不足は大事故につながる社会的な課題でもある。睡眠をもっと深く研究するには、科学、医歯薬学、社会学を統合した新たな学問体系が必要だ」と語る。

国立精神・神経センター精神保健研究所(千葉県市川市)の内山真・精神生理部長は「現代社会では、各病院にとって睡眠治療は欠くことのできない領域になりつつある。画期的な講座だ」と期待を寄せる。
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2004/05/14(金)No70:C型肝炎が糖尿病を誘発実験で実証!?

C型肝炎になると糖尿病を誘発しやすいことを東大医学部の小池和彦教授(感染制御学)らが動物実験で明らかにした。

ウイルス感染で起きるC型肝炎と、肥満や過食が引き金になる2型糖尿病の関連性は疫学調査で報告されているが、因果関係を生体で確かめたのは世界で初めてという。人でも同じ現象が起きていると考えられ、同教授は「C型肝炎患者は肥満、食事などに特に注意を」と指摘している。2型糖尿病は血糖値を下げるインスリンがうまく作用せず発症する。

同教授らは、C型肝炎ウイルスが作るタンパク質が肝臓でできるように遺伝子を導入したマウスを作製。インスリンを注射して一時間後に調べると、正常なマウスの血糖値は注射前の30%に下がったが、遺伝子を導入したマウスは48%にしか低下しなかった。遺伝子導入マウスは高カロリー食を与えると肥満になり糖尿病を発症したが、正常なマウスは高カロリー食でも発症しなかった。

インスリンは肝臓の細胞に働いて糖を作り過ぎないように調節している。遺伝子導入マウスを調べると、インスリンの作用経路に異常があったほか、肝臓で炎症性タンパク質が二倍以上に増えていた。このタンパク質を減らす物質を加えると、インスリンの効き目が正常近くまで改善した。同教授は「炎症性タンパク質はC型肝炎患者でも増えており、肝臓の異常が糖尿病の一因と考えられる」と話している。

<C型肝炎> C型肝炎ウイルスが原因。血液を介して感染することが多い。厚生労働省研究班の推計では、国内の感染者は約150万人。食欲不振、嘔吐(おうど)、黄疸(おうだん)などの症状が出て、放置すると肝硬変や肝臓がんに進むケースがある。A型肝炎などと比べ急性症状は軽く、症状が出ない場合もあるが、潜伏期間が長く、慢性化しやすいとされる。ウイルス駆除や肝臓の炎症を抑える治療が実施される。
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